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宮崎大学農学部 稲葉研究室

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InabaLab.通信

2010年10月アーカイブ

2010.10.27

松林先生来訪

 以前に予告しましたように、10月26日に松林先生が宮崎大学に来られました。しかし、報告を書きながら気がついたことが・・・。なんと、写真を撮り忘れました。しかし、セミナーにはたくさんの方が参加してくださり、盛況でした。また、私を含め学内の数名の先生と個別ディスカッションもしていただき、いろいろとアドバイスをいただきました。

 今回は最近発見された新しいペプチドホルモンの話をしてくださりました。松林先生の話を聞くたびに思うのですが、これぞ「目からウロコ」というようなアイデア・工夫にあふれており、しかもグループは少人数でそれほどお金をかけているようにも思えない。そんな研究がしたいなと思いつつ、なかなか真似できません。久しぶりにエキサイティングな話を聞くことができ、刺激になりました。

 夜は宮崎の地頭鶏と焼酎を堪能してもらいました。また機会があれば、お招きしたいものです。

2010.10.01

セミナーの案内【松林嘉克先生・10月26日】

 来る10月26日、農学部の水光正仁先生・榊原陽一先生との共催で、名古屋大学・松林嘉克先生のセミナーを開催します。興味のある方はご参集ください。

 松林先生は、かれこれ15年来の友人(先輩)で、学生時代からお世話になっています。「植物にはペプチドホルモンは存在しない」と考えられていた時代に、ペプチドホルモン「ファイトスルホカイン」を発見し、その後もファイトスルホカイン受容体や別の植物ホルモンを発見されています。当時学部生だった私には研究のインパクトまでは分かりませんでしたが、別の先輩が「松林がすごい発見をした!」と興奮気味に話をしていたのよくを覚えています。今回は、昨年、PNASに報告されたチロシン硫酸化酵素のお話と、最近、サイエンスに発表された新しいペプチドホルモンのお話をしていただけるものと思います。

日時:2010年10月26日(火) 午後3:00から

場所:宮崎大学フロンティア科学実験総合センター実験支援部門遺伝資源分野 一階セミナー室(場所

演題:翻訳後修飾に着目した新規ペプチドホルモン探索

要旨

 近年,高等植物において比較的短鎖の分泌型ペプチドを介した細胞間情報伝達機構の存在が次々と明らかになりつつある.こうしたペプチドホルモンの中には,翻訳後修飾やプロセシングを受けることではじめて本来の機能を示すものが少なくない.そのため,翻訳後修飾酵素の遺伝子を破壊すると,その支配下にあるすべての修飾ペプチドホルモンが活性を失い,結果的にその総和が表現型として表われる.したがって,翻訳後修飾酵素の欠損株の表現型を詳細に解析すれば,未知のホルモンの存在に気付くことができる可能性がある.

 我々は2009年に,シロイヌナズナにおいて,翻訳後修飾酵素のひとつであるチロシン硫酸化酵素(tyrosylprotein sulfotransferase, TPST)を同定した.TPSTは,ゴルジ体に局在する1回膜貫通型酵素であり,シロイヌナズナには1コピーのみ存在する.動物にもTPSTは存在するが,アミノ酸レベルでの類似性は全くないことから,植物と動物は進化の過程で独立してTPSTを獲得したと考えられる.この研究の過程で,我々はTPST遺伝子を破壊したシロイヌナズナ植物体(tpst-1)では,根端において未分化な幹細胞が維持されず,細胞分裂活性も顕著に低下するため,根が極端に短くなることに気づいた.この表現型は,既知のチロシン硫酸化ペプチドホルモンであるPSKとPSY1の培地への添加では回復できなかったことから,幹細胞の維持や細胞分裂活性の制御に関与する未知の硫酸化ペプチドホルモンの存在を強く示唆している.

 そこで我々は,既知のチロシン硫酸化ペプチドの硫酸化モチーフ配列を参考にしたin silico遺伝子スクリーニングとnano LC-MSを用いた成熟型ペプチド構造解析,およびtpst-1を用いたバイオアッセイによって,幹細胞の維持および根端分裂組織の活性制御に関与する硫酸化ペプチドをスクリーニングした.その結果,tpst-1の表現型を回復させる新しい硫酸化ペプチド群(Root meristem growth factors: RGF)を見出した.RGFペプチドファミリーは根端の幹細胞に隣接する静止中心細胞およびコルメラ幹細胞付近で主に発現しており,1 nM程度の低濃度で活性を示した.シロイヌナズナには9種類のRGF遺伝子が存在するが,それらのうち3種類を破壊した植物体では,根端分裂組織における細胞分裂活性の低下が確認された.これらの結果から, RGFペプチド群は,分泌型シグナルとして幹細胞の維持および根端分裂組織の細胞分裂活性の制御に関与していると考えられる.

 翻訳後修飾酵素遺伝子破壊株の表現型に着目することで,これまで見過ごされていた新しいペプチドホルモン群を見出せることが実証された.

参考論文

 Science (2010) 329:1065, Proc Natl Acad Sci USA (2009) 106:15067, Nat Chem Biol (2009) 5:578, Science (2008) 319:294, Proc Natl Acad Sci USA (2007) 104:18333, Annu Rev Plant Biol (2006) 57:649, Science (2002) 296:1470. ほか

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